果物と魚介類

ある土砂降りの日の事。

りんごたちが住むすずらん商店街は、雨がこれでもかという程、降り注いでいた。

なんでも部が長引いてしまった為、学校閉門時ギリギリに学校を出る生徒が二人。

あんどうりんごとささきまぐろは二人でお揃いの黒い傘を差し、びしょ濡れになりながらも、家路に着く為に頑張って雨の溢れかえる道を歩いていた。

「ねーえりんごちゃん☆」

「何ですか、ささきまぐろくん」

相変わらずのきちっとした返答をりんごがすると、

まぐろも相変わらずのニヤニヤした顔でこう言った。

「少し、雨宿りしていかない?」

「いいけど…どこで雨宿りするの?」

「すぐそこの理髪店だよ☆屋根が突き出してる所っていったらあそこしか無いんだよねぇ。」

「いいよ、じゃあ、少し急ぎましょうか」

「うん☆」

 

 

りんごとまぐろは、小走りで学校近くの理髪店に行き、そこで雨宿りをする事になった。

「…それにしても、降ってるねぇ、雨。湿気が悪いんじゃ、果物にも魚介類にもいい影響は出ないよね」

「うん…特にお魚は、腐っちゃったら大変だよね。」

「…っあ、りんごちゃん!肩が濡れてる!あと背中も…僕よりひどいや。髪もけっこう濡れちゃってるね…ちょっと待ってて、ハンカチ貸してあげるから」

「!いいんですよ、まぐろくん!!そこまで気を使わなくても…」

まぐろは高速で自分のポケットから黒いハンカチを取り出し、りんごに手渡した。

「僕は馬鹿だから風邪引かないけど、りんごちゃんは頭いいから、風邪引いちゃうでしょ?」

「あ、ありがとう…ございます…」

りんごは、恥ずかしそうに黒いハンカチで服に染み込んだ雨水を拭う。

まぐろはクスっと笑うと、土砂降りの空を見上げた。

「…りんごちゃん」

「はひ?」

「…僕ね、」

「あー、ハイハイ俺です!!分かってるって、サツにバレなけりゃいいんだろ。俺は一万な!!憶えとけよ」

突然、二人の隣に一人の背の高い学生がやって来た。

右手には煙草、左手には携帯が握られている。

「…まぐろくん、今なんて…」

「!……ごめん、少し待って。ごめんね」

まぐろはりんごの傍を離れると、学生のもとへ近寄っていった。

煙草を吸っている学生を、まぐろはじっくりと見つめた。

「…んだよ、お前、すぐ近くの学校の奴か?」

「はい。そうです」

「何の用だ、俺に文句あんのか?」

「はい。そうです」

りんごは、その言葉を聞いた途端、呼吸が止まるかと思った。

「あぁ?んだよ!俺がどうしたよ!?」

もちろん、その学生はまぐろにキレた様子。

「…彼女に、さっきから煙が当たってるんです。それに、ここは煙草を吸う場所じゃないですよ」

「彼女だぁ?ああ、お前!あの女子のカレシか!いいぜ、どけばいいんだろ。」

りんごはその学生の発言にホッとした。…が。

「その代わり、俺をどかせる料金を払ってもらおうか!」

…は?りんごは学生の言葉を聞いた途端、手に電撃を握らせていた。だが、まぐろは一歩も引かず、こんな事を言ったのだ。

「…では、僕の彼女に煙を当てた料金を払って下さい」

(まぐろくん――――――!!)

りんごはほぼ半泣き状態で、ひたすらまぐろを見守った。

何言ってるんでしょう私のクラスメイトは!!

「…フッ、なかなか根性座った奴だな。仕方ねェ、今回は軽い罰で済ませてやるよ。一発、殴らせてもらっても…構わないよなァ?」

「!!まぐっ…」

「それなら、いいですよ。その代わり、きちんと彼女に謝って下さい」

(きゃあああああまぐろく――――――――――ん!!)

りんごが心の中で叫んだと同時に、学生はまぐろくんに向かって腕を振りかぶった。

りんごは、目をつぶる余裕も無かった。

ボカッ!!バシャッ…

まぐろくんは、水溜りに容赦無く叩きつけられてしまった。

「ッ!!ま、まぐろくんに…何をするんですか!!」

「おおっと、おかしな事を言うな。こいつは俺との取引に同意したんだぜ。俺がお前に謝る代わりに、俺はコイツを殴っていい、ってな」

りんごは怒りに身を任せて、魔力を放出してみせようとした。

だが、男の方が速かったのだ。

腕を振りかぶるのが。

「コイツを殴ってはいけないっつー事は言われてねェよ!!」

(…駄目だッ、間に合わない…!!)

そう思った時、後ろから声が上がった。

「りんごちゃんッ!!」

まぐろはすぐさまその水溜りから起き上がり、りんごの正面に立ちはだかったのだ。

学生には背を向けず、真正面から受けるつもりらしい。

「まぐろくんッ!!」

りんごが大粒の涙を流しながらそう言った瞬間、まぐろの目の前に白い大きな影が現れた。

「…後輩を殴るとは、先輩の資格を与えられた者のするべき事ではない」

「…!!りすせんぱい…ッ!!」

現れた白い影とは、白衣を身に纏った我等が先輩、りすくませんぱいだった。

「おっと、あんたは見た事あるな…そういや俺のセンパイか。いやあ悪い悪い。邪魔モノは去りますよっと」

学生が去ろうとした時、まぐろが言った。

「…まだ、彼女に謝ってもらって無いんですけど」

自分より上の存在がいると分かった学生は、まぐろの言葉にひょいひょいと従った。

そして、汗をたらしながらりんごに精一杯の気持ちを込めて謝った。

 

 

不思議な事に、その出来事が終わりを迎えると、雨雲はすぐにどこかに去っていった。

「…悪かったねあんどうりんごくん。それにささきまぐろくん。私がもう少し早くここに着いていれば、な…」

まぐろは、りんごの涙を拭きながらこう言った。

「りすくませんぱいは悪くないですよ☆僕の発言が勝手過ぎただけです。おかげでりんごちゃんに怖い思いさせちゃったし…」

「そうか…まぐろくん、大人になったな」

「何言ってるんですか☆僕はまだ子供でいたいんですよ。…ねーりんごちゃん☆」

「ぐすッ…ま、まぐろくん…ご迷惑掛けました…ありが、ぐずッ、とうございました…」

顔をりんごの如く真っ赤にして、涙を手の甲で拭いながら、りんごは言った。

「あー、りんごちゃん、怖かったねぇ。ごめんね、僕が太陽極意でも発動させてればよかったんだけどねぇ。あーほら、泣かない泣かない…」

「まっ、ぐろ、ぐん…ぐす、かばってぐれて…わだじ、とでもうれじかったんでずよ…。とても…」

 りんごは何度も止まらない涙を拭い、それでも何とか止めようと涙を拭い続けた。

「…では、二人とも。私はここで別れるが…無事に帰れるね?」

「はい☆じゃあ、今日は有難う御座いました、りすくませんぱい☆」

「ざよう゛なら゛…ぜんばい゛…」

…その後、帰り道で人気の無い路地裏に来ると、りんごはいきなりまぐろに体を引き寄せられた。

「ちょ、まぐ…」

一瞬、何かの違和感。

(今、唇に、何かが触れた…。)

流れ続けていた涙はピタリと止まり、溢れ出る恥ずかしさにりんごはただ驚きを隠せないでいた。

「いきなりごめんねーりんごちゃん☆」

「まぐろ…くん…今、」

「あれ、分かんなかった?キ・ス☆」

りんごは顔が恥ずかしさのあまり熱で真っ赤に染まり、何処を映せばいいか分からない緑の瞳は、ひたすら地面の辺りを泳いでいた。

「やっぱ、り…今のは…人間が恋をすると衝動で行ってしまうといわれている、接吻…キス…なんです…ね…」

「…もっと知りたかったら、もう一回やってあげよーか?りんごちゃんは頭いいんだから、僕より知識があるなんてやっぱり駄目デショ☆」

「…ッな、何言ってるんですかまぐろくん!!終いには私、電撃放ちますよ!!」

それを聞くとまぐろは一層笑みを浮かべて

「んじゃあ、りんごちゃんは食べても平気かな☆副作用なんて僕のりんご愛の前では敵じゃないよー☆」

「…ッちょ…まぐろ…く…ん……?」

「りんごは健康にいいって言うし☆ねぇ、り・ん・ご・ちゃ・ん♪」

「私は果物じゃないですよーッ!!聞いてますかッ!?」

まぐろはりんごを力いっぱい抱き締めてからこう言った。

「…明日、学校じゃないよね」

「…へ?あ、は、はい…明日は休日です…よ…ってうわあ!まぐろくん何するんですかッ!!」

まぐろはりんごをゆっくりと押し倒した。

「…じゃあ、安心だね。明日起きれなくても」

まぐろの髪が下がり、いつもは見る事の出来ない瞳が見えた。だが、今はまぐろの目を見つめている場合ではない。

「何の事ですか…?」

まぐろの白い歯がキラッと光った。

「……りんごちゃん、いただきまーッす☆」

 

 

 

~この物語を終えて~管理人代理・あんどうりんご

はい。読者の皆様。

今回は、果物と魚介類を読んで下さって、誠に有難う御座いました。感謝しております。

それでは私、あんどうりんごがこの物語の裏話を致しますので、これをどうかあとがきだと思って下さい。

管理人が泣いて頼んでくるんです。どうか許してあげて下さい。

…。

その後、りすくませんぱいは私達の様子を日々見守ってくれています。

二人の間に実る愛を参考にしながら、恋愛小説を執筆中らしい事は、この間まぐろくんから聞きましたけど…。

何だか…何がしたいんでしょうねなんでも部は。

ラブストーリー、ですか。そうですね、何だか私にも興味が沸いてきました。

今度、書店に行けば売ってるかな。りせぱの小説。

あ、ちなみに何で雨なのに私が道に寝転っても平気だったかっていうと、路地裏の上には屋根が覆いかぶさっていたからであって…。

…え、何ですか母さん。まぐろくんから電話?分かったちょっと待ってて。

ガチャ

はい、ささきまぐろくん?はい…はい…はいィィッ!?

何言ってるんですか!!私達まだ中学生ですよ!!保健の授業に興味持ち過ぎです!!

りせぱが教えてくれた?…ってこの部活何が目的の部活なんですか!!

なんでも部って名前だから何でもしていいわけじゃないですよね!?

……え?何でもしていい部活だからなんでも部なんですか?

…私、退部しますよ。

嫌だったら目的の方針変えて下さい!!

何で文化祭でいやらしい雑誌を配布する事になってるんですか!!ただのヘンタイじゃないですかなんでも部!!

私、仮にも女子ですよ!!別に男子だから全面的にいやらしい事を考えていいという考えが正しいとは言い切れませんが…女子が全面的にいやらしいってかなり希少ですよ!!(多分

しかも部活の活動で加わってやってたりなんかしたら、ただのスケベでヘンタイでコンビニに入ったらついつい年齢制限のある雑誌を覗いてしまうただのアホな思春期娘に早変わりですよ!!

そーいう事分かって言ってるんですか!?魚介類!!ちゃんと聞いてるんですか!?

自重しろ管理人って言わないで下さいよ!!管理人も今思春期まっさかりなんですよ!!責任は思春期の年齢で設定されたキャラクターの私達にもあるんですよ!!

…ハァ、とりあえずりせぱにも言っておいて下さい!

私は、そんな部活に入部した憶えはありません!!

ガチャ

…騒いでしまいすみませんでした。

それでは、今回はこれで終わりとさせて頂きます。

では、最後に一言。

読んで下さって有難う御座いました!!