キーンコーンカーンコーン…
授業終了のチャイムは、シグの目覚まし時計の代わりになっている。
シグは、授業中ずっと特技の目を開けたまま眠る技を使い、授業を受けているフリをして過ごしていた。
先生が気づきそうになったら、隣のアミティに起こしてもらう事になっているので、この作戦はなかなか使える作戦だった。
「シーグー!勉強大丈夫??授業のまとめ、頭に入った?
「…う~ん…あんまり分かんなかった…」
シグが眠そうに目をこすりながらそう返すと、アミティは「そっかぁ…」と笑いながらシグのズレた机を直すのだった。
下校中、もちろんの事、アミティ達はいつものグループで固まって帰る。
アミティ、シグ、ラフィーナ、クルーク、リデルの五人だ。
中央にアミティが挟まり、右にシグ、左にラフィーナが並び、ラフィーナの後ろにリデル、シグの後ろにクルークが並ぶ。
クルークとラフィーナが、絶対に隣同士になりたくないと言うので、毎回この並びに決まっている。
「そーいえば、さ」
いつも、五人の中で始めに話を切り出すのはアミティだ。
「今日、オソロ墓地で、肝試し大会が開かれるのって知ってる?」
「…知らない」
「それは…知りませんでした…アミさん情報通なんですね…」
「…それくらい、知ってますわ」
「それがどうかしたのかい?…まさか君、行く気なの?」
四人の返答が全て返されると、アミティは自信満々にこう言った。
「当たり前だよ!!」
四人は、20%呆れた顔、80%やっぱりそうかという顔でアミティを見つめた。
アミティが一つ言い出すと、その場にいた人間は巻き込まれるしか選択肢が残されていないのだ。
下校中、アミティはその肝試し大会の持ち物や注意事項について、四人に細かく語った。
アミティが話した内容をまとめると、こうなる。
場所…オソロ墓地
開始時間…午後六時~午後八時
持ち物…暗闇を照らせる物(無い人・忘れてしまった人は貸し出ししておりますのでご安心下さい)
ルール…二人一組で入場して下さい。出場者が全員揃ったら、あくまさん特製のくじ引きで、ペアを決めます。次に、ペアに一つずつタイムウォッチを渡します。スタートからゴールまでにかかったタイムが、最も速かったペアには、豪華な賞品が用意してありますので、皆さん頑張って下さい。なお、墓地には様々な物が仕掛けてありますが、たとえそれがどんなに恐ろしい物でも、絶対に出て来た物に危害を加える事はしない様にお願いします。(生物がいる事が多々ありますが)
罰について…先程説明した、出て来た物に危害を加えない様にするルールを破られますと、強制的に危害を加えた人のみスタートへ戻って頂き、危害を加えてしまった物を修復・複製して頂きます。危害を加えた物が生物だった場合、その生物にひたすら謝罪して下さい。生物が許しを出すまで、謝罪はやめないで下さい。残されてしまった人は、可哀想ですがパートナーを止められなかった罰として、一人で墓地を抜けて頂きます。死ぬ程辛い様ならば、また違った罰を用意していますので、タイムウォッチに付属されているメール機能を使い、連絡をして下さい。
賞品について…賞品は、先程説しましたが、スタートからゴールまでにかかったタイムが(始めに渡されるタイムウォッチにて認証。改造・偽装しようとするとまた違った罰が与えられる仕組みになっています)が最も速かったペアには、豪華な賞品が与えられます。(ちなみに願いが一つ叶えられるメダルではありません)どうぞ皆さん、パートナーと苦難を共にし、豪華賞品を手に入れましょう!!
「…という様な事が、私の家に近くのポスターに書いてあったよ」
「随分細かく書いてあるポスターだね…それを全て憶える君もすごいと思うけど…」
「賞品て、何だろー」
「賞品ですか…嬉しいです…何だか目の前に目標があるっていいですよね…」
「…賞品、ねぇ…豪華エステツアー招待券100枚…とか、奮発していて下さると嬉しいのですけれど…」
「あ、そーだ。もう一つ言いたい事があるんだけど…この肝試し大会って、アルルとかりんごとか、別の世界の人達も来てくれるみたいだよ~^^」
「(もう一つの世界…って事は!!)おいアミティ!!」
アミティの驚きの発言に対し、クルークは心の底に沈んだ嫌な思い出を高速で蘇らせた。
「この前の…その…紅い奴とか来るんじゃないだろうな?…あんな奴にもう一度会ったりなんかしたら僕…二度と本から…」
肩を震わせて自らの記憶に怯えるクルークを見て、ラフィーナはニヤニヤと笑った。
「おほほほほほ…クルークったら、まだそんな昔の事を覚えていらしたの?自分の引き起こした事だったくせに、そこまで怯えるなんて…いつまで経っても幼稚のままですのね!」
ラフィーナは、いつものクルークに対しての恨みや仕返しのつもりで、大きく悪口を放った。
「ラフィーナ!…ちょっとソレは言いすぎだよ…クルークだってあの時は自分から魔物に捕まったわけじゃないんだし…」
アミティがラフィーナを止めようとして言った一言も、クルークにとっては心の傷を少しずつえぐられている様にしか感じられなかった。
「…いいよ。…お前がそんな風に言うんだったら、僕は…この大会、出ないからね。お前にとっては、僕の態度とか言動とか存在とか全てが目障りなんだろ」
クルークは、自分の唇を強く噛みながらそう言った。
「え…そんな…クルーク、ラフィーナはそうして欲しくて言った訳じゃないよ!」
アミティが「ラフィーナは、」と言い掛けた時、クルークはアミティを強く突き飛ばした。
「アミティ!」
「アミさん!」
不意をつかれ、アミティは後ろへ倒れてしまった。
そこをシグとリデルが支えてくれたので、どうにか怪我は防ぐ事が出来た。
「クルーク」
「メガネ」
アミティとシグは、ほぼ同時に言葉を発した。
クルークは、ここまで怒りに満ちたシグの瞳を見るのは初めてだった。
それはその場にいた四人全員が始めての事だったが、シグは決してクルークから目をそらさなかった。
「…なんだよ、その目。まるで、僕が間違った事をしたから謝れ、とで言いたそうな目だな」
「うん」
シグは、アミティの肩を支える自分の左手の力を、出来るだけ強くしない様に神経を使っていた。それでも決して、蒼と紅のオッドアイだけは、クルークを逃がさなかった。
すぐ傍にいたアミティとリデルは、すぐに勘付いた。
シグは、本気で怒っている。
「…メガネ、今すぐアミティに謝れ」
いつものシグとは全く違う、淡々としていて大人びた口調でシグは言った。
「何で?何故僕が敵と味方の区別が出来ない女なんかに謝らなくちゃいけないのさ?」
「!クルークさ…」
「リデル」
リデルが何か言い掛けたが、シグはそこを阻止した。
アミティをリデルに預け、シグはゆっくりとクルークに近寄った。
「アミティは、お前が思ってる様な弱い存在じゃない」
「…は?」
シグの発言に対し、クルークは首をかしげた。
「何…言ってんの、お前?」
「…お前が、アミティに謝る理由はそれだけでいいって言ってるんだよ」
クルークは、シグのあまりにも大胆な告白?に驚きを隠せなかった。まるでシグはアミティが好き、という事を言っている様に聞こえたのだ。
「…はッ、そんなの…全然理由なんかになってない…」
そうクルークが言った瞬間、ガッ!っと、すごい速さでシグはクルークの胸倉を掴んだ。
「…まだ、分かんない?」
その場にいた女子三人は、あまりにも急なシグの行動に、驚く事しか出来なかった。
クルークよりもシグの方がやや身長が高い為、腕力のあるシグにとっては、自分より背の低い相手の胸倉を掴み宙に浮かせる芸当は簡単に出来た。
「…ッ、何するんだよ…ここ、お前の家の近くだろ…こんな事して、後でどうなるか分かって…」
シグの耳は、クルークのアミティへの謝罪しか聞き入れなくなっていた。
「アミティに謝れ。今すぐ謝れ、たとえメガネでも、謝るって言うまでこの腕放さないから」
真剣に淡々と言葉を紡ぐシグを見て、クルークは心底自分の立場がどこなのか思い知らされた気分になった。
だが、クルークにも男としてのプライド、というものは存在していた。
ただ、クルークの場合、そのプライドはヘンな方向へ向いている為、女子に自分のしてしまった事を謝る、というのは本当に嫌だった。
「…嫌、だね。誰が女子なんかに謝るっていうんだよ」
シグは、胸倉を掴む腕の力を強めた。
クルークは、さらの地面から足が離れた。
「ウッ…、ゲホッケホッ…ゴホ…ッ」
「!!クルーク!シグ、放してあげて!クルーク、苦しそう…」
クルークの学ランの襟が、喉を強く押し、首の気管に痛みが走った。クルークは痛みに耐え切れず、宙に浮かびながらも大きく咳き込んだ。
「ゲホッ…ケホ、ゲホ…ッ」
「シグ!!お願い!!」
シグは、あまりにも必死そうに自分に頼むアミティを見て、彼女がそれを本気で言っている事を感じた。
「……分かった…降ろすよ」
ゆっくりと、シグはクルークの身体を地面へ降ろした。
いっきに自分にかかっていた力が抜けた為、クルークは身体の痛みを倍に感じている気分になった。
「シグ、ありがとう…もう、いいから。クルークもラフィーナも、悪く、ないから…」
クルークは、そうほろりと涙を流す少女を見て、自分のしてしまった事に対してくやしくてくやしくてたまらなくなり、その場を小走りで立ち去った。
「…メガネ、」
シグはクルークを呼び止めようとしたが、彼はもう既に、住宅の角を曲がってしまっていた。
「…夕方、私とシグとリデルとラフィーナとクルークで、集まれるといいね…私、ちゃんと皆の事待ってるからね。」
その場にいた三人は、その言葉に頷いた。
ただ、ラフィーナは、自分の無力さに、悲しみの表情を浮かべて自分を悔やむ事しか出来なかったのは、本当である。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
クルークは、家路に着いてからと言う物、紅い本のページをめくりながら考え事をしていた。
勿論、先程の出来事についてだ。
まず、誰が悪かったのか。
言い出したのはラフィーナ、あの女だ。
相変わらず、と言った所か。僕に向かって憎まれ口でも叩いたつもりだったのだろう。
だが、その後。
アミティが、僕とラフィーナの口論を止めようと、間に割って入った。
全く、いつまで経っても女子という生き物は行動の一つ一つが予想しにくい。
思い返すと、この二人に罪は無い様に思えて来た。
ラフィーナは、決して僕にダメージを与えたいが為にあの言葉を発した様には思えない。
僕がいつもあいつに憎まれ口を叩いているのは確かだし、あいつにだって僕と同じ様に大きく出てみたい時だってある筈だ。
そしてアミティは、いつも通りの僕達の仲を取り戻したくてあんな風に切り出して来たんだろう。
殺伐とした嫌な雰囲気を嫌がるあいつの事だ、今すぐにでも目の前の空気を安定させたかったのだろう。
それと――-―シグ。
あいつのした行動は正しいと思う。
あれはただ単に僕に暴力を振るったのではない。
大切な仲間を侮辱された事に対し怒りを覚え、加害者の僕に謝れと言っただけだ。
アミティもラフィーナもシグもリデルも、何にも悪くなかったんだ。
本当に、悪かったのは、
「悪いのはお前ではない」
「…え、」
言いかけた瞬間、僕の視界は真っ赤に染まった。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
アミティ、シグ、ラフィーナ、リデルの四人は、大会の開始時間三十分前に、アミティの家の前で待ち合わせをしていた。
「アミティ、遅いー」
「ごめん、ごめん!探し物してて…」
この大会に四人を誘った張本人だというのに、アミティは逆に待たせる立場になっていた。
ゼエゼエと荒い息を吐きながら、アミティは三人に、自分の持っていたモノを渡した。リデルは、それを受け取る。
「…コレって、いつもの赤いぷよ帽…ですよね?」
三人は、不思議そうに帽子を見つめる。いつものアミティの赤ぷよ帽と、何ら変わりは無い様に見える。
「…ハア、ハア…うん、見た目はいつもと変わんないけど…私が帽子に『光って!』って言うと、光ってくれるんだ」
「へーえ…アミティじゃないと光ってくれないの?」
ぽむぷむと赤ぷよ帽を突っつきながら、シグは言った。
「…うーん…それは分かんない。もしかしたら、シグにも反応してくれるかもしれないけど…」
「…そうなんですか。あ、私がコレ被ればツノも見えなくなるでしょうか…」
苦笑いしながらリデルは赤ぷよ帽を優しく撫でた。
すると、赤ぷよ帽はリデルの手に、甘えているかの様に懐いてくるではないか。
「きゃっ!?」
「わ…すごい。ぷよ帽って生きてるんだね」
四人は、五分程アミティの赤ぷよ帽とじゃれて遊んでいた。
だが、どうしてもアミティ以外の人には光ってくれず、アミティは三人に「光るのやらせてあげれなくてごめんね」と謝ったのだった。
ところで先程から台詞を言っていないラフィーナは、赤ぷよ帽に興味を持ってはいた物の、あの事を思い返すと、とても三人と話す気にはなれないのだった。
いつもならば気合で嫌な事は忘れられる筈だというのに。
まるで思考回路が狂った様な感じだ。
思った事が、行動に表せられない。
「ラフィーナー!そろそろオソロ墓地に行こー!間に合わなくなっちゃうよー!!」
アミティの好奇心溢れる元気な声を聞き、ラフィーナは別の事を考える作戦に移った。
忘れてしまった方がいい。
嫌な事は、皆。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「…何だよ…また、お前かよ……」
クルークは、目の前に立つ紅い男を見つめた。
男は、紅いマントを身に着けながら、既に本の中に閉じ込められてしまったクルークを見つめ返す。
「…また、会ったな…クルーク。」
「何で、お前がここにいるんだよ…」
この紅い男は知っている。
かれこれ一ヶ月前のこと、僕の身体を乗っ取った奴だ!
…くそ、出来る事なら忌まわしいコイツを今すぐにでも殴りたい。
だが、運悪くまたも身体を乗っ取られてしまっている為、魂だけになった自分には、せいぜい本から20cm程伸びる事しか出来ない。
……待てよ。
あいつが本から出る為には、つまり誰かを乗っ取る為には、三つの特殊な道具が必要だった筈だ。
一つ目は、太陽のしおり。コレはあの時僕がアミティにあげた筈だから、まだアミティの手元にある筈だ。
二つ目、月の石。この道具は、恐らくラフィーナが所持しているのだろう。あの女なら、誰かに何かを渡す事なんてほとんどありえない。
三つ目、星のランタン。この道具は…あのピンク髪の子供が持っているのだろうか。それともシグが持っているのか?…どちらにせよ、どこかに流通する可能性は低い。
この三つの道具とあいつの封印されている本、封印の記録が無ければ、決してあいつが本から出られる筈が無いのだ。
「…言っておくが、私はお前の為に呼び出されて来てやったのだぞ」
「…?は??」
紅い男は、マントに付属している鎖の止め具を整えながらおかしな事を言った。
…としか思えない。何を言ってるんだこの男は。
「…まだ分からないのか?」
分かる筈無いだろ。こちとらいきなり本の中に入れられて半パニック状態だってのに…。
頭の中が疑問で埋め尽くされた。
言葉を返す余裕が無い。
それでも紅い男は、僕に言葉へ紡ぐ。
「…分からないのなら仕方が無い。今起きている異変を教えてやろう」
そう言われて、内心ホッとした。
何だ、案外人間の心理が分かる奴じゃないか。
紅い男は静かに椅子に座り、腕組みをした。
僕の身体が、中身が変わっただけでこうも優雅に変わられると、何だかくやしく思える。
「…今日の午後六時より、祭りが開かれるそうだな」
「ああ…うん、肝試し大会の事だろ」
「……ついさっき、お前等が下校している時、墓地のある方向から、黒い気配を感じた」
「黒い…気配って…何のことだよ?」
奴は、一瞬だけ僕をちらりと見た。
「……伏せろ」
「え?」
何が言いたいのかよく分からなかったが、とりあえず魂の状態だが、出来る限り身体を小さくし、伏せた。
一応何が起こるのか気になる為、頭だけ上に少し上げる。見えた光景は…なんと奴は手に魔術を溜め込んでいた。
「えッ!?ちょ…お前!?何して…」
「ポムガラニット!!」
僕が言い終わる前に、奴は魔術を発動した。しかも僕の家だぞここ!!
放たれた紅い光線は、窓を破壊、いや家もろとも破壊してしまうかとも思える程強力なものだった。
…だが、不思議な事に、紅い光線は部屋を破壊するどころか、軽い衝撃波を生んだ後、消えてしまった。
「……!?消え…た…?」
奴は僕を引っつかむと、本の中に無理矢理押し込んだ。
「!苦し…何すんだよ、おい…」
「黙っていろ、クルーク。…連れて行かれたくなければ、な」
「うふふふふふ…まさか、ボクの企みに気づく人がいるなんて、いると思わなかったよ~」
奴の命令に従い、僕はひたすら息を殺し、本の中に納まって隠れていた。
どうやら、招かれざる客が現れた様だ。
「…貴様の目的は分かっている…。自分の器を探しているのだろう」
「そうだよ~正しく言うと、ボクの言う事を聞いてくれる人を探してるんだぁ」
音声しか情報が得られないのが惜しかったが、どうやらもう一人の男(?)は、僕の家に用があった様だ。
奴の言う、自分の器…とは、僕の様な生身の人間の事を言っているのだろうか。
もしかして、奴が僕を隠したのは、あの男から僕を守る為?
「先程…私の魔導を跳ね返したな。貴様も相当の魔導師か?」
「…違うよ~。別に強いも弱いもいくらでも変更できる事なんだし。キミは強いの?」
「何故そんな事を聞く?貴様は自分より強い相手に自ら突っ込んでいく性格なのか?」
「何百年も閉じ込められてたくせによくそんな事言えるね~。キミは強そうには見えないよ。ボクにはそう見える」
二人の魔導使いは、ほぼ同じ速度で魔導の準備を始めた。
巻き起こる風によって、本のページがパラパラとめくれる。
隠れていた本と一緒に、僕は勢いで飛ばされてしまった。
床へ、ドサっと落下した。
コレは…マズイ。どうしよう、こんな状態じゃ移動出来ない…。
「…チッ…仕方が無い…クルーク!!」
いきなり名を呼ばれ、頭上を見上げる。
奴が、僕が落下した事に気がついたんだ。
奴は、本を拾い上げ、表紙に手を当て、呪文を呟いた。
不思議な感覚に見舞われる。
足、手、全ての感覚が元に戻っていく。
数秒もすると、僕の身体は全て元通りになった。
だが、何故か奴の身体は僕の身体を借りた時のままだ。
どういう事だ?
「…私の事は置いてゆけ!!お前は今すぐ大会へ向かえ!!いいな!」
奴は、僕の背中を大きく突き飛ばした。
「あっ…おい!お前一人でそいつ倒せるのかよ!?お前そんなに強かったか!?」
嫌味に悪口を重ねた言葉を奴に投げかける。
だが、奴は無言のまま第三者のいる部屋へ戻っていった。
…何で僕があいつなんかに守られなくちゃいけないんだよッ!!
ほほ半泣きで、僕は自分の家を飛び出した。
もう何が何だか分からない。
そもそも、第三者って何なんだよ。姿だけでも見ておけばよかった…。
あーあ、暗闇を照らせるもの、忘れた。